「負けているのになぜ辞められない?」脳を支配する異常な思考回路
15年の依存症経験を一般教養に落とし込み、社会の「理解」を深める。それが苦しむ人々を解放する唯一のすべだと確信し、発信を続けています。
【教科書 #1】「見たくない」は正常な反応。でも、目をそらしても地獄は消えない
1. 異常な計算式:負けてもリスクは「ゼロ」?
水原一平氏のニュースでも話題になりましたが、周囲から見れば「なぜ使い切る前に辞めないのか」と不思議でなりません。しかし、当事者の脳内は極めて歪んだ計算式に支配されています。
もし手元に大金があっても、すでに失った額がそれ以上なら、脳はこう囁きます。
「真面目に働いて何十年もかけて返すのは不可能。でも、次の賭けで当てれば全部チャラになる。もし負けても、どのみち地獄。今の状況と変わらないじゃないか」
彼らにとって負けるリスクは実質ゼロに見えています。この極限状態では、1万円も1億円も関係ありません。手元にある金すべてが、地獄から抜け出すための「唯一の抽選券」に変わってしまうのです。
2. ドーパミンという「麻薬」が現実を消す
なぜこの異常な計算を信じてしまうのか。それはドーパミンが出ている間だけは、借金も嘘も惨めさも、すべて忘れることができるからです。依存症者にとってギャンブルは楽しみではなく、生きた心地のしない現実から逃げるための「麻酔」。麻酔を打つために、彼らは椅子に座り続けます。
3. 善意が仇となる「肩代わり」という名のガソリン
この「異常な計算式」が解けていない状態で、周りが借金を肩代わりするとどうなるでしょうか?
肩代わりによって一時的に首の皮が繋がると、脳は反省するどころか、こう考えます。
「よし、この浮いた金(または助けてもらった金)を軍資金にして、今度こそ大きく当てて家族に恩返しをしよう」
救済のつもりで出した手が、本人の脳内では「次の大勝負への後押し」にすり替わります。善意が依存の炎をさらに大きく燃やすガソリンになってしまうのです。
- 「当てればチャラ、負けても今と同じ」という思考がブレーキを壊す。
- 手元にある金は、額に関係なくすべて「次の抽選券」に見える。
- 肩代わりは救済ではなく、皮肉にも次の勝負への後押しになってしまう。
次回予告:
では、家族はどう対応すればいいのか? 善意が裏目に出る残酷な現実をどう断ち切るか。次回、【STEP 3:肩代わりが招く「共倒れ」の末路と防衛策】を詳しく解説します。
