教本第二号
第二章:病理的思考の解体
―なぜ負けているのに辞められないのか―
- 第1章:認識の打破(「見たくない」本能を超える)
- ▶ 第2章:病理的思考(負けても辞められない脳のバグ)
- 第3章:救済の逆説(肩代わりの禁止と底つきの重要性)
- 第4章:自己信頼の再構築(社会的責任と1日1得)
15年の依存症経験を一般教養に落とし込み、社会の「理解」を深める。それが苦しむ人々を解放する唯一のすべだと確信し、発信を続けています。
周囲から見れば「なぜ破滅する前に辞めないのか」と不可解に映る依存症者の行動。しかし、極限状態にある彼らの脳内では、極めて歪んだ計算式が成立しています。
「真面目に働いて何十年もかけて返すのは不可能だ。しかし、次の賭けで当てれば一瞬で全てがチャラになる。もし負けても、どのみち地獄。今の状況と変わらないではないか」
彼らにとって、負けるリスクは実質的に「ゼロ」に見えています。手元にある金銭の多寡は関係ありません。全ての所持金が、絶望から抜け出すための「唯一の抽選券」に化けてしまうのです。
なぜこれほど明白な「嘘」を信じ込んでしまうのか。それはドーパミンが放出されている間だけは、借金も、嘘も、自責の念も、全てを忘却できるからです。
依存症者にとって、ギャンブルはもはや娯楽ではありません。それは、生きた心地のしない過酷な現実から一時的に逃避するための「麻酔」なのです。彼らは快楽を求めているのではなく、痛みを消すために椅子に座り続けます。
この「異常な計算式」が解けていない状態で、周囲が良かれと思って借金を肩代わりすると、事態はさらに深刻化します。
救済によって一時的に窮地を脱した際、脳は反省するどころか、こう結論づけます。
「よし、この浮いた資金を軍資金にして、今度こそ大勝して家族に恩返しをしよう」
救済の手は、本人の脳内で「次なる勝負への軍資金」へとすり替えられます。善意が依存の炎をさらに燃え上がらせるガソリンとなってしまうのです。
【第二章 総括】
「負けても現状維持、勝てば天国」という歪んだ損得勘定がブレーキを破壊する。この異常なロジックを理解しないまま手を差し伸べることは、共倒れへの最短距離となることを知らねばならない。
