「意志が弱いだけ」で片付ける前に。120万円の借金の裏に隠された「トドメ」のストーリー

先日、ギャンブル依存症の更生施設のドキュメンタリーを見ました。そこには、20代や30代の若者が必死に自分を作り直そうとしている姿がありました。

しかし、私が衝撃を受けたのは動画の内容以上に、そこに並ぶ「正論」の嵐でした。これらのコメントは、世間一般としては「100%正しい」ものです。その正論を認めた上で、借金150万円で大学を中退し、15年パチンコに支配された私だから見える「裏側の景色」を話させてください。

経験者が語る、正論の裏側にある真実

「120万くらいの借金で人生終わりとか甘すぎる」

この120万円は「ただの数字」ではなく、人生のトドメなんです。その裏には、親に借金を肩代わりしてもらった過去、友人に嘘をついて借りた金、失った信頼のすべてが積み上がっています。ある人にとっては20万円がトドメになることもあります。120万は氷山の一角。その下に沈んでいる膨大な絶望が見えた時、人は「詰んだ」と感じるのです。

「生活保護なんて税金の無駄。働け」

正論は確かに正しい。でも、この突き放すような言葉が、依存症者を「現実逃避したい」という気持ちにさせ、再びホールへと駆り立てる引き金になります。皮肉なことに、無知な正論をぶつける行為が依存症者を増やしているようにも見えるのです。

「自業自得。同情の余地なし」

自分が一番悪いことなんて、本人が1000回破った約束とともに、一番よく分かっています。でも、辞められない。そんな人間を本当に救うのは、鋭い批判ではなく、周囲からの「気づけなくてごめんね」という言葉だったりします。正論がもたらす生きづらさ、会社でのストレス、家ですら安心できない悩み。そんな日常の「逃げ場のなさ」こそが、依存の根源にあるからです。

知ってほしい「ギャンブル依存症」という病の正体

私がこの記事を通じて一番伝えたいこと。それは、ギャンブル依存症は「自堕落な性格」のせいではなく、「脳の回路が書き換えられてしまった病気」だということです。

依存症の脳は、ギャンブル以外の刺激では快楽を感じにくくなっています。これは根性で治るものではなく、適切な治療と環境調整が必要な「機能障害」です。そして、この病気は決して他人事ではありません。

  • 常に効率や確率を追い求めてしまう。
  • 仕事のストレスが強く、リセットする場所がない。
  • 責任感が強く、一人で問題を抱え込みやすい。

こうした「優秀な側面」や「生真面目さ」を持つ人ほど、ふとした瞬間に脳が依存を選んでしまうリスクを孕んでいます。弁護士でも、社長でも、真面目な会社員でも、誰にでもなり得る病気。まずはその本当の姿を知ってください。

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正論を吐く「あなた」へ、知ってほしいこと

「甘えるな」という言葉は、確かに正しい。でも、その言葉が依存症者の逃げ場を奪い、さらなる逃避へと追い込んでいるとしたら、それは「救い」ではなく「助長」です。

誰かに言葉をぶつける前に、まずはこの病気の正体を知ってください。その上で、説教ではなく、一本のロープを投げられる社会であってほしいと願っています。

無知な正論が、誰かのトドメにならないために。

【免責事項】本記事は筆者の個人的な体験と見解に基づくものであり、医学的な診断や治療を目的としたものではありません。依存症でお困りの場合は、速やかに医療機関や公的機関へご相談ください。